風が冷たい朝。
洗濯物を干す。
赤ちゃんのおべべはやわらかい。
子どものTシャツはシミが取れない。
嫁さんのパンツは前より大きくなった。
お義母さんのパンツは前より地味になった。
冷たい風が吹きました。
お義母さんの肌色と黒色のパンストが
踊っています。
どちらも上手に踊っています。
風が冷たい朝。
洗濯物を干す。
赤ちゃんのおべべはやわらかい。
子どものTシャツはシミが取れない。
嫁さんのパンツは前より大きくなった。
お義母さんのパンツは前より地味になった。
冷たい風が吹きました。
お義母さんの肌色と黒色のパンストが
踊っています。
どちらも上手に踊っています。
「お父っつあん、あたいもう9つだぜ(本当は7歳)、9年も子ども育ててて、そんな約束が子どもに通用するとでも思ってんの?甘いよ、お父っつあん」
僕が、「毎日公文するって約束でゲーム買ったんやろ」と言うと、次男はこう返してくる。
11月に次男の落語教室の発表会がある。
嫁さんが産院に産後の入院中。
大変でしょうと言われるが、
実は全然大変じゃない。
なぜなら、うちにグーマ(義母)が来てくれている。
ご飯の品数がいつもより多く、
部屋もいつもよりきれい。
洗濯もしてくれるし、
ゴミ出しまでやってくれて、
三男と遊んでくれる。
夜の焼酎も買ってきてくれるし、
自家製の漬物までついてきた。
快適すぎて怖い。
もし一つ言うとしたら、
グーマのスカート丈が短めなのと、
パンストが気になるぐらい。
ほんとそれぐらい。
産まれた。
朝、産婦人科に嫁さんを送った日の夜、
「来て今!」
と嫁さんからメールがある。
急いで行くと嫁さんは力無くベットに横たわり、
「背中押して」
と痛みで掠れた声で言った。
よし。今回は、摩るんじゃなくて、押すのか。
しかし、低いベットに横向きに寝た人の背中を押すのはかなり難しい。
押しあぐねていると、
「もっと強く」
と嫁さんはジェスチャーで訴えてくるので、
僕は病院の床に体半分を這いつくばったようにして、背中を押す方法を開発する。
だがこの方法、強く押せるのはいいのだが、
体が病院の冷たいリノリウムの床で冷えて、
不意に下痢の腹痛を催した。
しかし、下痢の腹痛なんか嫁さんの陣痛に比べたら赤子同然。
とりあえず我慢我慢。
それに今回は無痛分娩のはず、少しは効いているのか、嫁さんが手に持って、さっきからカチカチと押しているのは麻酔らしい。
面白いことに、嫁さんの陣痛の波が去ると、
カーテン越しの隣の妊婦さんの陣痛の波が来ることに気づく。
隣は旦那さんが来てないようなので、
うちだけ優しい言葉をかけるの気が引けて、
黙って床に這いつくばって背中を押す。
床が結構汚いし、下痢で汗が出てきた。
「こうなりゃ子どもが先か、僕のパンツが汚れるのが先か勝負だ。」
と腹をくくる。
やはり4回目の出産はことが早いのか、
陣痛が始まって2時間、あれよあれよと分娩室に移動する事になるが、嫁さんの足取りがおかしい。
さっきからカチカチと押しまくっていた麻酔が効き過ぎてベロンベロンになっている。こんな状態で産めるのか不安になる。
部屋には恐めのベテラン助産師さんが一人。
さっきから内線で、
「先生は?生まれるよ。早く呼んで」
と怒って何度も応援を呼んでいるが、
先生も他の助産師さんもこない。
誰もこないうちに、もう子どもの頭が出てきてしまった。
かなり心配だけど、さっきからイライラしまくって物に当たったりしている、この助産師さんを信じるしかない。
ヘロヘロ妊婦とイライラ助産師。
僕は4回目の出産で初めて神様にお願いをした。
助産師さんが赤ちゃんの頭を片手で支えているので、僕が内線呼び出しボタンを押す役に任命される。
カチカチとボタンを押しまくるが返事がない。
嫁さんの背中をさするが、
嫁さんに睨まれたのでやめる。
助産師さんに、嫁さんの頭を上げろと言われて上げる。
嫁さんの体がベットからずり落ちてきたので、持ち上げろと言われて持ち上げる。
やっとのことで、他の助産師さんがやってきたかと思ったら、四男が出てきてオギャーと泣いた。
よかった。
なんでこんなにドタバタな出産しなあかんねんと思ったけど、まあよかった。
ことなきを得て、イライラ助産師さんが後から来た助産師さんを激しく叱責しだしたので、「まあまあまあ」となんでか知らんけど間に入る。
すると男の先生がやっと来て、
「おめでとうございます。」
と言われたが、
先生何もしてへんしと思った。
下痢の事は忘れてた。