俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

「すっごいいいの買ってきたよ。」

学校のバザーから帰ってきた次男が興奮して言った。

居酒屋で焼酎が入ってそうな蛇口のある甕。

友だちと取り合いになってジャンケンに勝ち、

やっとのことでうちにやってきた、らしい。

どおりで立派な木の台座に座ってる。

「250円安いでしょ?」

と次男は小さな蛇口をひねって、

満足そうに水を飲んでいた。

 

2日経過。

すでに次男はその甕の存在をすっかり忘れているが、台所ではかなりの存在感を放っている。

 

陸上競技

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三男の運動会。

父兄のリレーを見ていると、

「多分あの人が一番早いよ」

と長男が言った。

陸上選手のような格好をした、

いかにもに足の早そうなお父さんがいた。

「やっぱり父兄リレーに出なくてよかった」

と思って見ていたら、

その人はそんなに早くなかった。

「あの人、そんなに早くなかったね」

と長男も言っていた。

 

 

 

推敲

前にある雑誌に書いたエッセイが、

雑誌から出るエッセイ集に入る。

うれしい。

当時、そのエッセイを提出する際、

文章中の「ウンチ」を「ウンコ」に土壇場で変えてもらった。

 

悩んでいる。

「ウンコ」は少しとんがっているように今は思う。

「ウンチ」の方が可愛らしくて、いい。

もしかしたら、

「うんち」の方がなおいい。

計5回も出てくるから悩んでいる。

 

銀座

銀座。

高級時計店の前で並ぶ長い列があった。

なかなか買えない何かを買うんだろうな、

と思った。

その列の横を、一人のおっちゃんが奇声を上げて、自分の頬を通りの向こうまで響く強い力で、バシッバシッと平手打ちしながら走っていった。

 

想い出の渚2

去年の夏、商店街を歩いてたら、

「修理しても一万はかかるよ。買った方がいいんじゃないかな」

と、自転車屋のしゃがれ声のおじさんに言われ、

どうしようか悩んでいた女の人に見覚えがあった。

でも、誰だか思い出せなくて、

そのあと行った古本屋で立ち読みしてる時に、

いつもいく喫茶店のパートの人だ、

と思い出した。

 

あれ以来、喫茶店でその人に接客されるたびに、

その後、自転車どうしたのか聞きたいけど、まだ聞いたことはない。