天気のいい昼の海でひとり、
細長い生き物が入り込んだ筒状の棒を集める夢を見た。
たまにちろっと棒の先から顔を出す。
ドキッとする。
「なんでこんなもの集めてるんだろう」
と我に返って目が覚めると朝の5時。
まだ外が暗いので、ベットの中で細長い生き物のことをずっと考えてたら、
突然「チンアナゴだ」とわかった。
正月は特に何もしないで終わった。
昨日は何かやったというのが欲しくて外に出ようと思ったら、
次男に「寒いからやめとこうよ」
といわれやめた。
食卓の横の棚に母の写真が飾ってある。
写真の中の母は笑っている。
思い出した時に線香をあげる。
たまに手を合わせる。
「今日1日大事に生きや」
と言われているような気がするので、
「今日1日大事に生きます」
と心の中で答える。
でも、いつもてきとうな感じで生きてしまう。
あけましておめでとうございます。
仕事してると次男が横に来た。
生卵をたらりと垂らして、
そのままどっかいった。
独身の時は畳の部屋だった。
営業に写真を持って行く時は、
六畳の部屋を綺麗に掃除機をかけて、
そこに自分の写真を並べてみたり、
組み直したりしてまとめ、
ポートフォリオ(革製のクリアファイルのようなもの)に入れて、
営業先に持って行っていた。
ある女性ファッション誌に営業に行った時のこと。
二人の女性の編集者が僕のポートフォリオのページをめくるのを僕は緊張しながら横から見ていた。この瞬間はいつも生きた心地がしない。
あるページに来た時、編集者ふたりの表情が変わった。
小心者の僕は編集者のちょっとした反応も見逃さない。
自分のポートフォリオに目をやってみると、
驚いたことに写真のモデルのちょうど顔のあたりに毛が一本ついていた。
髪の毛と言い張るには縮れすぎていたし、
糸くずというには艶がありすぎた。
絶体絶命の状況、
僕がだんまりを決め込んだ次の瞬間、
編集者はぱらっと指先でその毛を弾き飛ばすと、
何事もなかったようにポートフォリオのページをめくり続けた。
そこから仕事は来なかった。