俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

細長い生き物

天気のいい昼の海でひとり、

細長い生き物が入り込んだ筒状の棒を集める夢を見た。

たまにちろっと棒の先から顔を出す。

ドキッとする。

「なんでこんなもの集めてるんだろう」

と我に返って目が覚めると朝の5時。

まだ外が暗いので、ベットの中で細長い生き物のことをずっと考えてたら、

突然「チンアナゴだ」とわかった。

 

 

 

マグロ

テレビのニュースを見ていたら、

マグロを素手で捕まえたおじさんがインタビューを受けていた。

おじさんは、友だちを浜に寝転ばせマグロ役にし、どうやって捕まえたか実演していた。

「必死で食らいついたよ」

と友達に必死に食らいついた。

食らいつかれたおじさんもまんざらではなさそうだった。

砂浜に転がって実演するおじさんが2人。

それをいいなと思ってテレビを見るおじさんが1人。

 

 

 

 

 

あけましておめでとうございます

ちょっと前の写真


食卓の横の棚に母の写真が飾ってある。

写真の中の母は笑っている。

思い出した時に線香をあげる。

たまに手を合わせる。

「今日1日大事に生きや」

と言われているような気がするので、

「今日1日大事に生きます」

と心の中で答える。

でも、いつもてきとうな感じで生きてしまう。

 

あけましておめでとうございます。

 

 

バイト君


小学校からの友だちが東京に来たので、2人で「はとバス」に乗った。

友だちは「バスガイドさんよかったな」と言った。

僕が同意しないと「まだまだ熟女が分かってないな」と言われた。

それから飲みに行った。

そのあとスナックに歌いに行くと、70はゆうに超えたおじいさんが「バイト君」と呼ばれて働いていた。その歳で「バイト君」はどうかと思ったが、

目は黒目がちでキラキラしてて、

内気そうだったからやっぱり「バイト君」でいい。

ポートフォリオの作り方

独身の時は畳の部屋だった。

営業に写真を持って行く時は、

六畳の部屋を綺麗に掃除機をかけて、

そこに自分の写真を並べてみたり、

組み直したりしてまとめ、

ポートフォリオ(革製のクリアファイルのようなもの)に入れて、

営業先に持って行っていた。

 

ある女性ファッション誌に営業に行った時のこと。

二人の女性の編集者が僕のポートフォリオのページをめくるのを僕は緊張しながら横から見ていた。この瞬間はいつも生きた心地がしない。

あるページに来た時、編集者ふたりの表情が変わった。

小心者の僕は編集者のちょっとした反応も見逃さない。

自分のポートフォリオに目をやってみると、

驚いたことに写真のモデルのちょうど顔のあたりに毛が一本ついていた。

髪の毛と言い張るには縮れすぎていたし、

糸くずというには艶がありすぎた。

絶体絶命の状況、

僕がだんまりを決め込んだ次の瞬間、

編集者はぱらっと指先でその毛を弾き飛ばすと、

何事もなかったようにポートフォリオのページをめくり続けた。

 

そこから仕事は来なかった。