俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

トイレトレーニング

朝起きてから、時間のかかるお米を入れた圧力鍋とお味噌汁の鍋を火かけるまでトイレに行くのを我慢している。

点火するやいなや、急いでトイレに駆け込む。

今朝もそうやって、一晩中膀胱に貯め込んだものをすりーっと出していると、

ばーんとトイレのドアが開き、

「こんなとこでなにしてんのよ」

って顔で妻が、

「大、小?」と聞く。

「小」

「まだ?」と横でイライラされても終わる気配なし。

「2階は?」

「こうちゃんが大してる。せっかく、きょうちゃんがトイレ行くって言ってるのに」

四男はトイレトレーニング中。

と言われても終わらない。

下っ腹に力を入れ押し出そうとしたけど、

いっこうに終わる気配なし。

 

 

 

アイデア

妻が原稿を書いている僕のところにやってきて、

「今月の東京新聞のアイデアあげようか?」

と言ってきた。

「ください」とお願いすると、

「私、最近インスタ見てて気づいたんだけど、世界中お父さんて、どこもみんなどうしょうもないの。それ書いたら?」

「………。」

書けるなら書きたいけど、

何がどう、どうしようもないのかとかは一切教えてくれない。

 

 

見えない敵

四男の今日のヒーローごっこ

お気に入りの赤いパーカのフードを被り、

小さい両手は硬く握られる。

「おれぇはシュパイダーマン……。」

とぶつぶつと長い独り言をいい、

こっちにやってくると

「おまえもこい」

と言うのでついていく。

「よし、これをもってろ。これはチャックだ」

とカーテンを束ねるチェーンを僕に渡し、

何もない空間を指差し、

「ありぇはロボットだ。おまえもいってみろ」

と強要される。

「あれはロボットだ」と僕も言うと、

「いろはピンクだ」と教えてくれる。

「おれがやっちゅけてくる」と走り出して、

「やっ、やっ、やっ、」

と短い足が空中に蹴りを入れ、

「やっちゅけたぞ」と肩で息をして戻ってくる。

「おれぇはいえにかえりゅ」

とソファーで寝たフリをするので覗き込むと、

「おまえもいえにかえりぇ」

と薄目を開けて言う。

 

 

 

出口です

出張続きで一週間家にいなかった。

「いいなあ、自分のことだけしてたらいいんやろ」

と妻に言われるも、

「仕事やんか」といいつつ、

すごく楽しみにしていたが、

2泊目の夜に子どもに会いたくなって

携帯で子どもの写真を見て寝る。

 

名古屋でタクシーに乗ると、

かなり年配の運転手さんが話しかけてきた。

 

「どちらからお越しですか?」

「東京です」

「失礼ですけどお医者さんですか?」

と聞かれた。

「どこか悪いんですか?」

「もう悪いとこだらけで」

 

おじいさんの運転するタクシーは、

降りる予定の高速の出口の一つ手前で間違って降りた。

おじいさんも僕も

「一つ手前で降りたな」と気づいたが黙っていたら、

カーナビだけがまだ高速に乗っているつもりで

「出口です。出口です…」

と言い続けた。

 

 

水筒

「ママ、水筒ちゃんと洗ってる?」

部活から帰ってきた長男が言った。

「洗ってるわよ」

と妻、不機嫌になって言い返す。
「だってハエが出てきたんだよ」

 

長男の水筒は、黒くて1.5リットルもはいるビッグサイズで爆弾みたいに見える。

 

 

 

トリック オア トリート

 

車で家の近くを三男を乗せて走っていたら、

「この道通ったことないよね」

「なんでいままで通ってくれなかったの?」

「この道通ってほしかったな」

と三男ははじめて通る道に興奮していた。

「かわいい犬いるよ。犬か猫飼いたいな」

「ほら、おじさんが洗濯物干してるよ」

「パパ、おじさんカツラ被ってたよ」

と言ったのでびっくりして聞き返す。

「えっ、どんなカツラ?」

「ハゲのカツラだよ」

「ハゲを隠すためのカツラじゃないの?」

「だってハゲのカツラかぶってたんだもん」

 

一瞬ハロウィンかなとも思ったが、

そんなわけはない。

本当はハゲてないのに、

わざわざ禿げてるように見せるカツラをかぶって、

ベランダで洗濯物を干しているおじさんがいるんだったら、

僕は毎日この道を通る。