俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

DIY

 

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「お母さんの納骨の時の話しーや」

実家に帰った時、姉はそう言って父を急かしておきながら、「お父さん自分でお墓開けて納骨してんで」と結末を語った。

母との婚約指輪を一緒に行った宝石屋さんで値切り、母のお葬式代をも値切った父は、母の納骨をお寺さんに頼まずに自分で墓を開けて済ませてしまった。

「墓石の骨を入れるところがコンクリみたいなんで閉めてあって、なかなか開けへんくて大変やったわ」と父はうれしそうに言った。

仏事には詳しくないけど、それがかなりおかしい事は分かる。

「墓石に名前入ってへんけどな、まあええか」と、父はオチもありまっせと言わんばかりに言った。

僕は加瀬家の長男なので、父の納骨の時も、やっぱりその伝統に則って、風呂敷に父の骨壷を包み、リュックにはトンカチを忍ばして、夜中の墓地に霧のように現れる自分を想像してみる。