俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

木村進

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僕が人生で初めて生で見た芸能人の木村進さんが亡くなられた。木村進さんは僕が小さい頃、間寛平さんと張る吉本新喜劇のスターで、そこそこ2枚目で、僕の中の木村進さんは、いつもジュリーとイメージが被っていた。

僕が小学校二年生の時、近所の商店街にその木村進さんがくるというニュースが広まった。僕と友達は土曜日、家で昼飯をかきこみ、大急ぎで商店街に集まった。何せ、あの木村進が来るんだから。本人を見るまでは、半信半疑だった僕らの前に、選挙の応援でデコレーションされた車に乗った木村さんが現れた。その選挙カーは、ペットショプと呼ぶにはあまりにも地味で、ザリガニとかヤドカリなんかを売っていた「角野」という店のあたりに留まっていた。一緒に乗っていた政治家が短い演説のようなものをすると、いつもは車が走ることのない狭く、アーケードのせいで薄暗い商店街の中を車はゆっくり走り出した。店主がPTA会長をして、毎日夕方にドーベルマンの散歩をさせていた村上メガネの前を通り、「水虫」のポスターがおどろおどろしい薬局を突っ切り、ケンタッキーフライドチキンに似せたフライドチキンの店を右に曲がると、2のつく日には夜店の出るちんちん電車の線路沿いに走り、いつもお年玉を貯金していた銀行の横に出たところで車はスピードを上げた。「木村進木村進!」僕らは必死に叫びながら車を追いかけた。小学生に呼び捨てにされても、木村進さんは笑いながら手を振ってくれてた。僕はテレビに出てる人と繋がっている感じが嬉しくて、いつまでも叫んで追いかけた。

今、あの選挙カーが走った商店街の店はほとんど営業してないけど、相変わらずアーケードのせいで薄暗い。