お父さん営業?日記

営業に行けないナイーブな中年のおじさんがブログの力を借りて営業に行こうと日々奮闘する?

マドレーヌ2

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ガンちゃんが、おふくろの味は「マドレーヌ」だと言った。(7/2のブログに登場)

ガンちゃんのお父さんは、島根の漁港で働いていて、いいところの出のお母さんと結婚した。料理が好きじゃなかったお母さんは、お父さんが毎日持って帰ってくる魚を、いつも刺身にして子どもたちに食べさせていたところ、「子どもが毎日刺身か!ハンバーグとかあるやろ」と夫婦喧嘩になっていたそう。

そんなお母さんも、お菓子を作るのは好きだった。

「いつもおやつの時間には、かあちゃんが作ったマドレーヌでアフタヌーンティーみたいなことするんですよ。」

 

窓に掛かったレースのカーテン越しに、午後の光に照らされた日本海が見える。柱時計がボーンボーンと3時を告げると、奥から現れた上品な女性は、お盆に綺麗に焼きあがったマドレーヌとティーセットを乗せている。「あらあら、ガンちゃん今日はお友達も一緒なの?」隣を見ると白髪混じりの中年のガンちゃんが、いつの間にやら半ズボンを履いた子どもになっている。「やったー、かあちゃんのマドレーヌだ!」と子どものガンちゃんはキーキー声で興奮している。「ガンちゃん、お行儀がわるいですよ。」ガンちゃんのお母さんは、僕のカップになみなみと紅茶を注ぐと、受け皿に輪切りのレモンを添えてくれた。「お口にあったら良いんですけど」と手製のマドレーヌが二つ載ったお皿も。僕は縁の薄い、熱くなったカップに唇を当てる。口をマドレーヌでいっぱいにし、「な、うまいだろ?」と言わんばかりに、目を見開いてこっちを覗き込むガンちゃんは、人は子どもの頃にほとんど完成されているものだと教えてくれる。「今日はお仕事でこちらに?なんだかカメラマンなさってるんですって?」とお母さんは言った。「はい、それでいつもガンちゃんのところに寄らせてもらってるんです。」と僕が答えると、「良いわね、好きなことをお仕事になさって」と、お母さんはカップの細い取っ手を指先で持ち、やさしい笑顔を浮かべて言った。程なくして、玄関がガラガラッと開く音がしたので見てみると、白い長靴を履いたお父さんと思しき男の人が、手に立派なカレイを持って立っていた。