帰りたい
朝の散歩に三男が、兄のローラーブレードを片足だけ履いて行くと言って聞かない。
片足だけ履いて歩き出すと、
案の定、アイススケートを初めてする人みたいに、
へっぴりごしで壁を伝って、ひょこひょこ歩いている。
遅い。全然進まない。
お婆さんに抜かれた。
犬の散歩には、速攻で抜かれた。
「いつもの道もきみの歩みに合わせて、ゆっくり歩けたおかげで、今まで気づかなかったものに出会えた。ありがとう息子ちゃん」
とか全然ない。
家のすぐ前の道なんて、
今更見るものは何もない。
ここをこんなにみっちり歩きたくない。
三男が自分でしゃがむとこけるので、
落ちているどんぐりを拾えという。
拾って渡すと大事そうにポケットに入れる。
日傘をさした人を見て、
「雨ふってないのにねー」
と嬉しそうに耳打ちしてくる。
少しするとポケットのどんぐりが無いと騒ぎ出す。
探しにいこうと言われる。
へっぴりごしで来た道を戻る。
三男は途中、道端の花に気を取られて、
どんぐりのことを全く忘れてる。
帰りたい。