ミスみどり
僕の母は、「ミスみどり」だった。
「ミスみどり」は、うちの実家のブティック「いとや商店」があった大阪の安立町商店街の今はなきミスコンテスト。
母は事あるごとに「わて、「ミスみどり」やってんで」と自慢してたので、若い頃の母は、まあまあ美人やったんやと思って育ってきたけど、ある時見せてくれた「ミスみどり」時代の写真の母が、ぱつんぱつんに太っていて驚いた。
「ミスみどり太いやん」
と僕が母に言うと、
「何言うてんの、こん時、ソフト(ボール)やめて、盲腸の手術の後でよう食べて、ちょうど太っとったんやんか。日舞はやっとったけどな、それで日舞の先生に一人で踊りぃ言われて、わて一番ええ役で他の子らの前で一人で踊ったんやで」
と半分本気で怒りながら始まったよくわからない言い訳が、最後に他の自慢話に上手に着地していた。