こうちゃんが(次男)が「けんと(三男)の服を作る」と言い出した。
家にあった切りっぱなしの布をけんとの体に当て、
腕を通す穴を2つ開けた。
「明日、幼稚園に着ていけるね」
と、こうちゃんは真面目な顔で言うが、
サイコーにアバンギャルド。
出張が続いて爪が伸びてる。
明日、切ろうと思ってるけど、
多分、明日には忘れてると思う。
利島にある2レーンだけあるボーリング場
伊豆諸島にある利島に昨日から来てる。
この島は、船だと海がよく荒れるので欠航する事が多いらしく、伊豆大島からヘリコプターで飛んできた。
頼んであった民宿に着くと、女性のライターの人と二人で一部屋しか空いてなかったので、急遽、宿のおばあさんの休憩室で立派な仏壇もある部屋に僕は寝ることになった。
おばあさんは自分の休憩室でもあるせいか、休憩ごとに僕の部屋にやってきては、自分のマイ座椅子に座って色々と話をしてくれた。
「三重県の人は色が黒くて老けている」
と自分も三重県出身のおばあさんは、なんでかそう主張していて、
「私も最近、色が白くなったのよ」と言っては、袖を捲し上げては、腕やら首やらを見せてくる。僕は「白いですね」と返事した。
「それに老けてて、50歳の時に80歳に間違えられたの。今は80だけど、最近は若く見られる様になったみたい。何歳に見える?」と聞かれたので、
「50」と答えたらと柿くれた。
今朝、嫁さんが証明写真を撮ってくれと言ってきた。
「でもまだ顔ができてないから」と言って、
どんな効果があるのか、ラクロスで使う硬いボールを顔に這わしている。
「今日は顔がむくんでんの」
と言いながら。
僕がカメラを用意して戻ると、
化粧をしながら、朝ご飯をかきこんでいた。
「顔できた?」
と僕が聞くと、
「もうすぐ出来る」
と嫁さん。
次はトイレに移動し、眉毛をブラシみたいなのでシュッシュしている。
2歳の子どもが足元で泣いている。
僕もだんだんめんどくさくなってきて、
「いつ出来るん?」
と聞くと、
「じゃ、もういいわ」と不貞腐れて白壁の前に立つ。
それでもカメラを向けると口角を上げる嫁さん。
画面で写真を確認すると、露出オーバーで顔が白くとんでいた。
「時間ないから、もうそれでいいわ」
と嫁さんはめんどくさそうに言ったけど、
本当は顔の輪郭が白くとんで喜んでいるのを僕は知っている。