本当の君
今朝、嫁さんが証明写真を撮ってくれと言ってきた。
「でもまだ顔ができてないから」と言って、
どんな効果があるのか、ラクロスで使う硬いボールを顔に這わしている。
「今日は顔がむくんでんの」
と言いながら。
僕がカメラを用意して戻ると、
化粧をしながら、朝ご飯をかきこんでいた。
「顔できた?」
と僕が聞くと、
「もうすぐ出来る」
と嫁さん。
次はトイレに移動し、眉毛をブラシみたいなのでシュッシュしている。
2歳の子どもが足元で泣いている。
僕もだんだんめんどくさくなってきて、
「いつ出来るん?」
と聞くと、
「じゃ、もういいわ」と不貞腐れて白壁の前に立つ。
それでもカメラを向けると口角を上げる嫁さん。
画面で写真を確認すると、露出オーバーで顔が白くとんでいた。
「時間ないから、もうそれでいいわ」
と嫁さんはめんどくさそうに言ったけど、
本当は顔の輪郭が白くとんで喜んでいるのを僕は知っている。