ロマンスグレー達筆
今年は暑いなと思う。
去年も確か暑かった。
その前も暑かったやろうし、その前の年もやっぱり暑かったに違いない。
これは去年の暑かった時の話。
ロケで何日も暑い中写真を撮る仕事が続いた。
初日、股間が痒いなと思っていた。
(汚い話ですいません)
でも、2日目もやっぱり痒いなと思って、バレないようにボリボリかいていた。(すいません)
3日目になるとボリボリボリボリかいていた。(ほんますいません)
「これが世に言う『インキンタムシ』とかいうやつじゃないか?」
と思い4日目に皮膚科に行った。
先生が「はい、痒いところ出してください」と言った。
「こんな女性の看護師さんがいっぱいいるところで」と僕が躊躇していると、
先生はサッとカーテンを引いてミニ個室を作ってくれた。
「インキンじゃないよ、とりあえず薬出しとくから、また様子みせに来て」
と言われた。
皮膚科の前にある薬局に行く。
漢方薬も置いてるらしい店内には、大きな朝鮮人参の瓶詰めが何個もある。
ガラス張りの薬の並んでる部屋から、上品なロマンスグレーのおばあさんの薬剤師が出てきた。
「この陰部1のクリームを塗ってから、陰部2のクリームを塗ってくださいね」と丁寧に説明してくれたのはいいが、他にもお客さんがいたのでまいった。
家に帰って薬を塗っていると、
「陰部1」、「陰部2」と必要以上に達筆で書かれたラベルの貼ってあるクリームのケースを見た嫁さんが、「これって陰部って書く必要ある?」と言って爆笑していた。
その後、さっきの上品なおばあさんから電話があった。
何やら、薬手帳のシールを渡し忘れたらしい。