俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

昼間のくも

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お昼前、家の中で三男が

「くも、くも」と言っていた。

うちには、たくさんのクモが住んでいるので「そうか」と返事してほって置いたが、

あまりにひつこく言っているので見に行くと、タンスの下に「こおろぎ」がいた。

三男は虫のことを全部「くも」と呼んでいる。

夜、寝る前に水を飲もうとキッチンに行くと、明らかに部屋の中で鳴いている虫の声が部屋中に響きわたっていた。これは昼間のくもだなと思った。

スーパーコンピューター健

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早めに家を出ればいいのは分かっている。

準備をしてからダラダラすればいいのも分かっている。

嫁さんは10年以上、仕事に行く前の僕に注意をしてくれているが、僕が分かっていて出来ないことに気がついているのだろうか?

 

家から駅まで歩いて10分。

電車が出る8分前に出ると、

当たり前やけど2分足りない。

どこかでこの2分を取り返さなくては、

電車に間に合わない。

僕は冷静になって考える。

その時の僕の頭は「スーパーコンピューター健」。

急いで歩くか or   ゆっくり走るか。

 スーパーコンピューター健は、あらゆるデータを駆使し、

「イソイデアルク」と答えを出した。

ピコピコ、正解。

「ハシルト エキマデ モタナイ」。

オフコース、コンピューター。

歩くコース採りに無駄はない。

スーパーマーケットの前から、駅に向かうカーブを早歩きする僕は、

アイルトン・セナシケインに入っていく時のように美しい。

「ユー セナ!ユー セナ!」

オッケー!マイ コンピューター。

 

今日も何とか電車に間に合った。

最後ちょっと走ったけど。

 

 

チャック ニコルソン

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Nから貰った仕事にいく。

Nは、僕より10ほど若いが、ロンドンの留学時からの友だちで、今は広告の制作会社で働いている。

やらしい話、広告の仕事の相場は、雑誌とかWEBの仕事とは桁が違うので、

「けんさん、めっちゃ安い仕事ですけどやりますか?」

とNは言ってくるが、僕にとっては全然安くない。

なので僕は、

「安くて誰もやりたがらないような仕事があったら、全部こっちに回してくれ」

とNに言ってある。

 

 そうすると、メインの写真なり動画は、イケてるカメラマンが撮るけど、カット数が多くて、そのカメラマンの手が回らないようなサブカットを僕が撮るという仕事をくれる。

僕の捨てても捨てても、どこかに潜んでいるプライドが少しヒリヒリしたり、サブである気楽さに安住している自分に大丈夫か?とヒヤヒヤしたりもするが、嫁さん子どもを飢えさせてはいけないという言い訳を盾にしっかと前を向く。

 

朝、沢山のスタッフがみんな集まって挨拶し合っている。僕が、「動画の機材ってデカイな」とか呑気思ってるとNが、「けんさん、チャック開いてますよ」と言ってきた。チャックは、少し空いてたどころではなく全開だった。僕は焦って、「みんなの中にサッと入っていこうと思って」と言って返したが、その返しが上手くもなく、全く面白くなく、この状況をもっと痛々しい方に推し進めたことは、自分が一番わかっていた。

最初に躓いて、もう帰りたい気分になったけど、「チャック開いてて帰った45歳のおっさん」は、伝説になり得るので踏ん張る。

その後、一生懸命写真を撮ってたら、やっぱり写真を撮るのが好きやし、みんないい人やったし、もちろん帰らなくてよかった。

 

イワシの処理

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子どもと釣りに行った。

イワシ11匹、キス1匹釣った。

晩御飯にイワシは刺身に、キスは1匹だけど天ぷらに嫁さんがしてくれた。

イワシは小さい骨がいっぱいあるらしく、

嫁さんはトゲ抜きで小骨を抜いていた。

なかなかプロっぽい。

すると2歳の三男が、

「ママ、これ(で)しょ、ママ、これ(で)しょ」

と言って自分の胸のあたりを触っては手を前に出すという意味不明な動きを続けた。

 

後で分かったのは、

うちでは魚の小骨を抜くとげ抜きを

嫁さんの脇毛の処理をするビューティーグッズとして、

兼用しているということ。

 

 

あいまいなカメラマンの私2

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写真を撮る時、こんな風に撮りたいなと思ってても、なんとなく恥ずかしくて、

(何恥ずかしがっとんねん)

何も言えないまま撮影が終わってしまう事がある。

(アホちゃうか)

そんな日の帰りの電車で、「自分はカメラマンに向いてないのとちゃうか?」と悩む。

周りに人がいるのに、

思い出して、「あーー」って声が出てしまう。

 

家に帰って今日撮った写真を見てたら、

「結構、カメラマン向いてるかも」と思う。



 

 

いとや2

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またひとつ、実家のブティックの僕の生まれるずっと前の話をします。


これまたある日の晩、いつものように店の二階で、家族と店員の人たちで寝ていると、店員の女の子が「泥棒やー!」と叫んだ。みんなが驚いている中、おばあちゃんは布団から飛び起きて、泥棒を商店街の端まで「ドロボー!」と大声で叫びながら、裸足で追いかけていった。

 

泥棒は店に盗みに入ったまではいいが、店員の女の子が寝ているのにムラムラときて、イタズラをしたら大声を出され、そのままおばあちゃんに追いかけられて逃げて行ったらしい。

 

生前、 おばあちゃんがこの話をする時はいつも、おじいちゃんが全く役に立たなかったという話に最後はなる。