俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

追悼A氏

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知らない人の写真展に行くと、

会場にアラーキーがいた。

内気な僕が柄にも無く、つかつかと近づいていって声を掛け、自分でも驚いたことに、荒木さんの前でスラスラと言葉が止まらなかった。

 

僕が初めて買った荒木さんの本が、写真集じゃ無くてエッセイ集「アラーキズム」だった事。

その本を友だちにも読ませて、篠山紀信アラーキーの伝説の対談を真似ていた事。

その後、テレビで初めて聞いた荒木さんの声が思いの外高くて、やっていたモノマネが全くデタラメだとわかった事。

荒木さんが来るという事だけで就職した東京の写真のスタジオで、雑誌「SMスナイパー」の撮影の時はいつも、読者モデルのアソコの毛を剃る為のお湯とタオルを用意するのが僕の担当だった事。

一度、大駱駝艦の撮影でスタジオに来た時、ペーパーの切り方ですごく怒られたが、いまだに何が正解だったのかわからない事。

荒木さんが、ふむふむと機嫌よく聴いてくれるので、僕は調子にのって話し続けた。

調子乗りついでにカメラを出して荒木さんを劇写しようと思ったら

「まだフイルムカメラ使ってるの?それじゃ今は写らないよ」

と荒木さんの甲高い声で言われたところで夢から目が覚めた。

 

僕は思った。

これは虫の知らせで、もしや荒木さん亡くなられたんじゃないかと。まだまだ夜が明けない暗闇の中、携帯で「アラーキー」と検索してみたけど、訃報のニュースが出てこなかったので、荒木さんは普通に元気に生きてはると思し、虫も僕にまでは教えてくれへんやろうとも思った。

まだ布団の中で興奮している。

 

 

恋はメキメキ

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久しぶりに義母のところにバイトに行く。

バリ取りで背中が痛くなってきた午後2時。

白金台のメッキ屋さんに配達。

高価そうなマンションの前にメッキ屋さんの看板を発見。

えらいハイソなとこにメッキ屋さんあるんやなと思ったが、

メッキ屋さんが場違いな所にあるんじゃなくて、

多分、周りが変わっていったんやと思う。

 

鉄板をメッキ屋さんに運ぶと、

「重い?大丈夫?」

工場の主人らしきおっちゃんの感じが良い。

普段話す機会がない業種の人と話せるのはうれしい。

「電話で会社の人にも話したけど、段取り上、仕上がりは週明けになります」

と言うおっちゃんの両耳から黒くて大きな丸い耳毛が出てて、一瞬イヤホンかと思った。

 

 

 

ショック

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今日で4日間続いた鎌倉特集の撮影が終わる。

家から近いからすごく楽。

鎌倉の仕事全部回して欲しいぐらい。

 

朝から、休み気分いっぱいの子どもが、

ベイブレード(現代版コマ)で遊んでいる。

キッチンで食後のコーヒーを入れていると、

テレビのニュースがコロナの影響で、経済がリーマンショックの時よりも悪くなるのでは、と言っていた。

「私ら結婚した日がリーマンショックの日やったから、全然心配してへんけど」

と頼もしいことを言う嫁さん。

「不景気家族ってタイトルでどう?」

て僕が言ったら、

「いらんわ。この状況やったら離婚してる人おると思うよ」

と言われた。

 

 

目標リリース

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「私、今年は筋膜リリース頑張るわ」

 と嫁さんが言ってきた。

嫁さんはヨガをやっていると思っていたら、

本当は「筋膜リリース」というものをやっているらしい。

「それって、頑張るとか今年の目標にする様なことなん?」

て聞いたら、

「人が頑張るって言ってんねんから、なんで素直に応援できひんの?嫌な人間やな」

て言われた。

「その「筋膜リリース」って何なん?」って嫁さんに聞いたら、

「筋膜をリリースするの」って言ってた。