「ママ、水筒ちゃんと洗ってる?」
部活から帰ってきた長男が言った。
「洗ってるわよ」
と妻、不機嫌になって言い返す。
「だってハエが出てきたんだよ」
長男の水筒は、黒くて1.5リットルもはいるビッグサイズで爆弾みたいに見える。
「ママ、水筒ちゃんと洗ってる?」
部活から帰ってきた長男が言った。
「洗ってるわよ」
と妻、不機嫌になって言い返す。
「だってハエが出てきたんだよ」
長男の水筒は、黒くて1.5リットルもはいるビッグサイズで爆弾みたいに見える。
車で家の近くを三男を乗せて走っていたら、
「この道通ったことないよね」
「なんでいままで通ってくれなかったの?」
「この道通ってほしかったな」
と三男ははじめて通る道に興奮していた。
「かわいい犬いるよ。犬か猫飼いたいな」
「ほら、おじさんが洗濯物干してるよ」
「パパ、おじさんカツラ被ってたよ」
と言ったのでびっくりして聞き返す。
「えっ、どんなカツラ?」
「ハゲのカツラだよ」
「ハゲを隠すためのカツラじゃないの?」
「だってハゲのカツラかぶってたんだもん」
一瞬ハロウィンかなとも思ったが、
そんなわけはない。
本当はハゲてないのに、
わざわざ禿げてるように見せるカツラをかぶって、
ベランダで洗濯物を干しているおじさんがいるんだったら、
僕は毎日この道を通る。
『ポール・ヴァーゼンの植物標本』 標本展示
がはじまります。
お近くの方は是非どうぞ。
会期:2023年11月3日(金)~11月30日(木)
[第1期] 11月 3日(金)~ 9日(木)
[第2期] 11月10日(金)~16日(木)
[第3期] 11月17日(金)~23日(木)
[第4期] 11月24日(金)~30日(木)
時間:11:00 – 19:00 会期中無休
–
東京の古道具店主が南フランスの蚤の市で偶然出会った植物標本。
およそ百年も昔、ある一人の女性ポール・ヴァーゼンによって作られたものだという─。
いまなお残る花々のかすかな色と、胸をしめつける掌編とを編んだ本『ポール・ヴァーゼンの植物標本』。
今年5月には同書の写真展を開催した恵文社一乗寺店で、
書籍に収録した植物標本(非売品)の展示と、標本を写し撮った写真の販売を行います。
会期中は堀江敏幸さんによる『ポール・ヴァーゼンの植物標本』直筆サイン本も販売。
書籍や写真をお買い上げの方には特製ラッピングペーパーをプレゼントいたします。
(サイン本、購入特典ともに数量限定です。)
一度に2枚ずつ展示される標本は、1週間ごとに変わります。
時を、国を越えてやってきた彼女の花たちに、何度でも会いに来てください。
[展示参加:標本=ATLAS 飯村弦太]
[標本撮影:加瀬健太郎]
–
【会場】
〒606-8184
tel. 075-711-5919
⇒ http://www.keibunsha-store.com/
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次男は朝から、いそいそと狼男のお面を作っていた。
針金ハンガーをペンチで伸ばし、グルーガンで繋げ、その上に紙粘土を貼り付け、そこまでいって、これはうまく出来ない、と諦めたのか、全てを食卓の上にほったらかしたまま、拗ねて布団に入って漫画を読んでいた。
僕は前に撮影で使ったツッパリのリーゼントのカツラを出してきて次男に被せ、油性マジックで髭と、長嶋茂雄のような割れた顎を書いた。
鏡に映った自分に大笑いした次男は、
マスクで書いたところを隠し、
うれしそうにパーティーに出かけたが、
時間を間違えて友達に会えなかった次男は、
すぐにしょんぼりして帰ってきた。
次男は洗面所で
「パパが油性マジックで書くから消えないよ」
と文句をいいながら顔を洗っていたが完全には消えず、1日中、うっすら残った髭と男らしい顎が残っていておかしかった。
三男とお風呂に入っていたら、
「こっから見るとパパ、サルみたい」
と言われる。
「なんでや」と聞くと、
「顔がサルみたいだから」
って言ってた。
この前の日曜日は、三男の幼稚園の運動会だった。
一緒に行った義理の母は、
「おばあちゃん」と幼稚園の先生に呼ばれて怒っていたが、
他に呼びようがあるなら教えて欲しい。
そんなことより、子どものかけっこより、
僕の今回の目玉は保護者リレーだった。
昨年は若いお父さんに抜かれる惨めな姿を子どもに見られたくない思いで参加しなかった。
「参加することに意義があるのではないか、抜かれたからってなんだ、ありのままの姿見せるのよ」
と1年間ウジウジと考え、
今年は妻に「もし人が足らなかったら参加」と書いてもらった。
何の連絡もなかったので、足りてたんだと安心していたら2日前に参加の旨を妻から聞く。
もう少し早く知っていれば公園を走ったり出来たのに。
いや、知っててもしなかったかもしれない。
しなかったと思う。
「リレーにご参加の保護者の方は、入場ゲートまでお集まりください」
リレーの順番を決めるじゃんけんに負けた僕は、
アンカーの襷をかけていた。