俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

出口です

出張続きで一週間家にいなかった。

「いいなあ、自分のことだけしてたらいいんやろ」

と妻に言われるも、

「仕事やんか」といいつつ、

すごく楽しみにしていたが、

2泊目の夜に子どもに会いたくなって

携帯で子どもの写真を見て寝る。

 

名古屋でタクシーに乗ると、

かなり年配の運転手さんが話しかけてきた。

 

「どちらからお越しですか?」

「東京です」

「失礼ですけどお医者さんですか?」

と聞かれた。

「どこか悪いんですか?」

「もう悪いとこだらけで」

 

おじいさんの運転するタクシーは、

降りる予定の高速の出口の一つ手前で間違って降りた。

おじいさんも僕も

「一つ手前で降りたな」と気づいたが黙っていたら、

カーナビだけがまだ高速に乗っているつもりで

「出口です。出口です…」

と言い続けた。

 

 

トリック オア トリート

 

車で家の近くを三男を乗せて走っていたら、

「この道通ったことないよね」

「なんでいままで通ってくれなかったの?」

「この道通ってほしかったな」

と三男ははじめて通る道に興奮していた。

「かわいい犬いるよ。犬か猫飼いたいな」

「ほら、おじさんが洗濯物干してるよ」

「パパ、おじさんカツラ被ってたよ」

と言ったのでびっくりして聞き返す。

「えっ、どんなカツラ?」

「ハゲのカツラだよ」

「ハゲを隠すためのカツラじゃないの?」

「だってハゲのカツラかぶってたんだもん」

 

一瞬ハロウィンかなとも思ったが、

そんなわけはない。

本当はハゲてないのに、

わざわざ禿げてるように見せるカツラをかぶって、

ベランダで洗濯物を干しているおじさんがいるんだったら、

僕は毎日この道を通る。

 

 

 

『ポール・ヴァーゼンの植物標本』 標本展示

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『ポール・ヴァーゼンの植物標本』 標本展示

がはじまります。

お近くの方は是非どうぞ。

 

会場:恵文社一乗寺店 (京都・一乗寺

会期:2023年11月3日(金)~11月30日(木)

[第1期] 11月  3日(金)~  9日(木)

[第2期] 11月10日(金)~16日(木)

[第3期] 11月17日(金)~23日(木)

[第4期] 11月24日(金)~30日(木)

 

時間:11:00 – 19:00 会期中無休

 

東京の古道具店主が南フランスの蚤の市で偶然出会った植物標本。

およそ百年も昔、ある一人の女性ポール・ヴァーゼンによって作られたものだという─。

 

いまなお残る花々のかすかな色と、胸をしめつける掌編とを編んだ本『ポール・ヴァーゼンの植物標本』。

 

今年5月には同書の写真展を開催した恵文社一乗寺店で、

書籍に収録した植物標本(非売品)の展示と、標本を写し撮った写真の販売を行います。

 

会期中は堀江敏幸さんによる『ポール・ヴァーゼンの植物標本』直筆サイン本も販売。

書籍や写真をお買い上げの方には特製ラッピングペーパーをプレゼントいたします。

(サイン本、購入特典ともに数量限定です。)

 

一度に2枚ずつ展示される標本は、1週間ごとに変わります。

時を、国を越えてやってきた彼女の花たちに、何度でも会いに来てください。

 

 

[展示参加:標本=ATLAS 飯村弦太]

[標本撮影:加瀬健太郎

 

【会場】

恵文社一乗寺店

〒606-8184

京都府京都市左京区一乗寺払殿町10

tel. 075-711-5919

http://www.keibunsha-store.com/

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ハロウィン

次男は朝から、いそいそと狼男のお面を作っていた。

針金ハンガーをペンチで伸ばし、グルーガンで繋げ、その上に紙粘土を貼り付け、そこまでいって、これはうまく出来ない、と諦めたのか、全てを食卓の上にほったらかしたまま、拗ねて布団に入って漫画を読んでいた。

僕は前に撮影で使ったツッパリのリーゼントのカツラを出してきて次男に被せ、油性マジックで髭と、長嶋茂雄のような割れた顎を書いた。

鏡に映った自分に大笑いした次男は、

マスクで書いたところを隠し、

うれしそうにパーティーに出かけたが、

時間を間違えて友達に会えなかった次男は、

すぐにしょんぼりして帰ってきた。

 

次男は洗面所で

「パパが油性マジックで書くから消えないよ」

と文句をいいながら顔を洗っていたが完全には消えず、1日中、うっすら残った髭と男らしい顎が残っていておかしかった。