俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

見えない敵

四男の今日のヒーローごっこ

お気に入りの赤いパーカのフードを被り、

小さい両手は硬く握られる。

「おれぇはシュパイダーマン……。」

とぶつぶつと長い独り言をいい、

こっちにやってくると

「おまえもこい」

と言うのでついていく。

「よし、これをもってろ。これはチャックだ」

とカーテンを束ねるチェーンを僕に渡し、

何もない空間を指差し、

「ありぇはロボットだ。おまえもいってみろ」

と強要される。

「あれはロボットだ」と僕も言うと、

「いろはピンクだ」と教えてくれる。

「おれがやっちゅけてくる」と走り出して、

「やっ、やっ、やっ、」

と短い足が空中に蹴りを入れ、

「やっちゅけたぞ」と肩で息をして戻ってくる。

「おれぇはいえにかえりゅ」

とソファーで寝たフリをするので覗き込むと、

「おまえもいえにかえりぇ」

と薄目を開けて言う。