俺のイタリア

イタリアに行ったことのない男の日常

キル バーン

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20代後半、僕はイギリスに留学していた。最初はイギリスの郊外の方に住んでいて、それから写真の勉強をする為、ロンドンに移り住んだ。ロンドンで初めに住んだアパートは、キルバーンという街にあって、そこには、中東や東南アジア、アフリカからの移民の人が沢山住んでいて、駅前には、「ここはイギリスか?」と疑ってしまうような異国情緒たっぷりのマーケットもあり活気がある町だった。

引っ越してすぐの頃の夜、買い物に近くのスーパーに行こうと歩いていると、建物の少し奥まった所で、おばさん2人が言い争っていた。突然、片方のおばさんが相手をグーで殴った。殴られたおばさんがリアルな悲鳴をあげる。僕が驚いて立ちつくしていると、今度は殴られたおばさんが、スーパーのビニール袋持ったままの手で殴り返した。自転車はなぎ倒され、2人は地面に倒れこみながらも戦いは続いた。それ以降、最初のようなクリーンヒットはなく、オレンジ色の街灯の下、もつれあった2人が抱き合ってるように見えた。通りかかった中東系の人が「やれやれ」みたいなニュアンスで僕に微笑みかけた。僕は外国に来たんだなと思った。