30日は母の命日だった。
4年経ったので、不意に急激な悲しみに襲われることは無くなったけど、不思議と喪失感は緩やかに増えていくように思う。
今年もオリンピックがあるらしい。
30日は母の命日だった。
4年経ったので、不意に急激な悲しみに襲われることは無くなったけど、不思議と喪失感は緩やかに増えていくように思う。
今年もオリンピックがあるらしい。
「◎△$♪×¥●&%#?!」
夜、子どもと寝る準備をしていると、隣の部屋から聞こえてきた。
「◎△●&%#?!」
嫁さんが何か言ってるのは分かるけど、
何て言ってるか分からない。
放っておく。
「いい加減誰か来たらっ」
嫁さんが怒ってるみたいなので、子どもらに様子見に行ってもらう。
「ハサミハサミ」
子どもが湿布を持ってきて半分に切り、急いで隣の部屋に戻って行った。
静かになった。とにかく落ち着いた様子。
少しして扉が開く。
「寒う〜寒う〜っ」
びっこひいた嫁さんが、パンツいっちょでやってきた。中々ワイルドで刺激的な登場。
裸で何してたのか聞いたら、
スリッパ履こうとしたら、上手いこといかず、ぐねったらしい。(よくわからん)
「骨折してると思う」
って嫁さんは言ったけど、
してないと思う。
昨日は急遽「タケ会」が開かれた。
タケちゃんは会ってすぐさま、
「タケ会」を改め「まっすぐの会」
にしようと言い出した。
「メンバーの3人がまっすぐ生きているから」
という事らしいが、これ以上まっすぐなネーミングは無いと思う。
タケちゃんは今、恋をしている。
50才間近でも恋は恋。
意中の人に送ったLINEが既読にならないと悶絶しているオッサンの姿には、爽やかさのかけらもないけど、タケちゃんは恋をしている。素敵で無敵。
「恋の駆け引きとかしたく無いから、絵文字は使わんようにしてるんやわ」
と、よくわからないことを言ってる。
うまいこといってほしい。
昨日、トイレから三男が「でたよ」なんて声が掛かったんで
出向いてみますてぇと、あれの終わった三男が、
トイレットペーパーをくれって言うもんですから、
「あちきがかわいい尻でも拭こうかしら」
なんて思っていますてぇと、
「じぶんで、じぶんで」
なんて三男の方で言うもんで、
「あら、こりゃ残念」
と思いましたが、
子どもに独立心が芽生えて喜ばないのも
親としておかしいんじゃねえかと思い直したりなんかしましてね、
三男の晴れ舞台をトイレの端からしっかと見学していたって訳なんですけども、
これがなかなか大人も顔負けの拭き方で、
拭いた後の紙を見る所なんか堂が入っていやしてね、
「こいつぁ、一角の人間になるにちげぇねぇ」
と親バカだと思われるでしょうが、喜んでいた訳です。
それであいつがトイレを出たんで、パンツを履かせてやろうかと思いましたらね、やっぱり例の
「じぶんで、じぶんで」
って言うもんですから、
あたしゃね、もう目頭が熱ーくなって、
「おい、かあちゃん、見てみい、チビっこいのが「じぶんで、じぶんで」ってパンツを履いてるよ」って、二人で赤飯でも炊こうかって相談していた訳なんですけど、
まあ、あれですねぇ、まだまだ赤ちゃんに毛の生えた様なもんで、
パンツの後ろっ側がひっくり返ってんですよ。
「こりゃ、しようがねえな、やっぱりあちきの出番かな」
とこの度も馳せ参じた訳ですが、
パンツを上げる前に老婆心ながらちゃんと尻が拭けてるか
チェックしておこうと思いましてねぇ、
「くんくん」
尻を嗅いでみましたところ、
そのくさいのくさくないの。
うんこがそのままついてんじゃねえかってぐれぇで、
こちとら今日になっても鼻がほらっ、
ひん曲がったままでございます。
ドロ人間とは、首から上が泥で出来た人間。
とにかく恐ろしいドロ人間は世界各地にいる。
家族で大阪に向かう飛行場。
その行く手を謎の外国人が遮った。
「電話番号を教えないと、骨を1本取るぞ」
と謎の外国人は言ってきた。
しょうがないので電話番号を教えて飛行機に乗る。
「あれっ、そんなに怖くなかったわ。」
とここで、昨夜長男が見たすごく怖い夢「ドロ人間」の話は終わった。
結局、ドロ人間は話に一度も出てこなかったから、
謎の外国人の方が数段怖かった。
とりあえず、まだ誰からも電話はかかってきてない。
打ち合わせが1日に3つ入った。
写真の仕事が1つと文章の仕事が2つ。
最近ネジ屋に立て続けにバイトに通ったせいか、
義理の兄(ネジ屋社長)が嫁さんに、
「健ちゃんて、写真の仕事ないの?」
と心配して聞いてきたらしい。
それに僕もそろそろ本職の写真の仕事がしたい気分になっていたのでうれしい。
「いや〜、パパな、仕事入っちゃって、明日東京で3つも打ち合わせに行かなあかんわ」
と僕が嬉しさを抑えきれず、近くにいた長男に言うと、
「よかったね。最近仕事なかったもんね」
と言われた。
小3にもなれば大概のことは分かってると思っていい。
大阪の実家の近くに貸し漫画屋があった。
漫画が何よりも好物だった姉と僕(二人とも小学校の時にマンガクラブ所属)は、夕方になると、よく二人でその貸し漫画屋に向かった。
当時、「手塚治虫」にはまっていた僕は、片っ端から「マンガの神様」の作品を読み漁っていたが、店頭にはマンガを並べるスペースに限りがあるので、手塚治虫のような古いマンガは、店主のおじいさんに言って奥から出して来てもらう。
「ブラックジャックの23巻と24巻と25巻ありますか?」
と僕が言うと、おじいさんはいつも一瞬固まり、
何も言わずにジロリとこちらを見る。
その眼差しには
「手塚か?おまえわかっとんな」
という意味が含まれているのは、他の漫画を借りた時に、この儀式がないのでも分かっていた。
おじいさんは、店の奥から本を持って出てくると席に座り、
「ブラックジャーーック、手塚治虫」
と結構でかい芝居掛かった声で誰に言うともなく言う。
どう反応していいのか分からず突っ立っている僕をよそに、おじいさんは店の帳面に僕の会員番号と日付を鉛筆で書き込む。
姉が漫画の借り賃を僕の分もまとめて払う段になると、おじいさんは、毎月難波のビヤホール「ライオン」で開かれる戦友会に中学生だった姉を「来たらみんな喜ぶねんけどな」といつも誘っていた。